ピアノ

初心者が独学でピアノを攻略できるのか?

「ピアノを習っておけば良かったな~」

そういう後悔の念を抱く人は少なくありません。
でも、後悔する必要なんてありません。
今からでも、独学でしっかりピアノを学べますし、あなたの頑張り次第では、人々を驚かせるほどのレベルに上達する事も可能です。

この記事でご紹介する各ステップを、一つづつ確実にクリアしていければ、誰でも高い確率でピアノを弾けるようになりますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。

この記事を書いているのは誰?

この記事を書いている私(男性)は、小学校低学年の頃に3年近く毎週レッスンに通った経験があります。
最初はあんなに弾きたかったピアノなのに、バイエルの下巻を卒業する頃にはすっかりピアノに飽きてしまい、自宅では殆ど練習をしなくなっていました。
レッスンに通うのが嫌で嫌で、次第に私は元気が無くなっていき、遂に病院で診察を受けたところ、脚気(かっけ)と診断されました。
脚気とは、一般にはビタミンBの不足が原因で起こる病気ですが、私の場合はピアノという精神的な負担が引き起こしたものとみられ「そんなに嫌なら、ピアノを辞めてみなさい。」と医師にアドバイスされました。
そのアドバイスのおかげで、私はレッスンから開放され、私の脚気はたちどころに治ってしまいましたが、子供時代にピアノを学ぶという貴重な習慣を、私自身で捨て去る事となったのでした。

ピアノから手を洗ったまま私は成長し、大学生になっていました。
同級生の家に遊びに行ったある日、私は強い衝撃を受けました。
ピアノなんて弾きそうもない男友達が、映画「スティング」のテーマである「ジ・エンターテイナー」を、見事に私の目の前で弾いてみせたのです。
その演奏の見事さ、その友達が弾きこなしている事の意外さは、私自身の幼き日の強い願望を蘇らせました。

「ピアノが弾けるようになりたい。」

その思いの火は、小さくとも強く、私の心の奥底に再点灯されたのです。

それから数年が経過し、サラリーマンとなった私は、趣味のレベルですがピアノの練習再開を決意します。
当記事は、その後の私の経験を元に、ピアノの独学について詳しく解説していくものです。

自分のピアノを手に入れる。

ピアノを独学で学ぶ最初のステップは、学ぶための自分のピアノ、又はキーボードを手に入れることです。
ピアノをレンタルするとか、貸しピアノレッスンルームを見つけるとか、ピアノを持っている友人や、ピアノがある学校等の施設にお願いしてみるとか、自分がピアノを所有しないでピアノを弾く方法は様々あるとは思いますが、早期にレッスンに集中する為にも、今後何年もの間にかかるであろう時間とお金の両コストを最低限に抑える為にも、自分専用のピアノ(又は電子キーボード)を買うのがベストだと確信します。
勿論、幸運にも労せずしてピアノが弾ける環境にある方にまで購入を勧めるつもりはありませんが、大人になってからピアノを独学してみたいと思う方の殆どは、身近にはピアノが無いはずです。
下記のポイントを抑えつつ、できるだけ早期に、ご自身専用のピアノを手に入れて下さい。

どんなピアノが独学に適しているのか?

ピアノと言えば、アコースティック(電源を持たない楽器)のアップライトピアノやグランドピアノを思い浮かべると思います。
誰でも、そうしたアコースティックのピアノが理想と思いがちですが、独学での学びや訓練を前提とするなら、アコースティクではなく、電子ピアノが最適と言えます。

その理由の第一は、アコースティックピアノは大きな音が出るので、近所迷惑の事を気にしながら練習したり、防音ルームを設置したりする必要がある事です。

近所迷惑を気にしながらでは練習もままなりませんし、防音ルームにピアノを入れられるような、経済的&物理的環境にある人は、そんなに多くはないはずです。
その点、電子ピアノなら、音を出して良い時には、アコースティックピアノと同様に音が出せると同時に、殆どの練習時間には、ヘッドフォンで音を聞く事により、他人の耳を気にする事なく、思う存分練習に集中する事ができるのです。

アコースティックピアノよりも電子ピアノが優れている理由の第二は、現在の電子ピアノの殆どは、自身の演奏を記録し、自由にそれを聞く事ができる点です。
ピアノを演奏している時、自分の演奏は当然聞こえていますが、演奏そのものに神経を使っているので、音楽的にどのように演奏ができているのかが、よく判りません。
ピアノの先生に直接レッスンしてもらっているなら、自身では気がつかない、自分の演奏の改善点を的確に指摘してもらえますが、独学では無理です。
だから、演奏している時には演奏に集中し、演奏が終わったら、その録音を聞き、自分の理想とする演奏家の演奏と聴き比べる等して、自分で改善すべき点を特定し、それを練習に役立てていく必要があります。
ピアノの独学においては、あなたが生徒であると同時に、あなた自身がピアノの先生となって、あなたを指導していかねばならないのです。
その為には、あなたの演奏を容易に記録できる電子ピアノが適しているのです。
アコースティックピアノでも演奏を録音する事はできますが、音を出す必要があるし、録音機材も準備せねばなりません。その点、電子ピアノなら、何の手間もいらずに自分の演奏を録音し、聞く事ができる点で、電子ピアノはアコースティックピアノに優っているのです。

しかし、電子ピアノなら何でも良い訳ではありません。
以下の項目について、しっかり選ぶ必要があります。

自分が納得できるピアノのが出るピアノである事

これから先、何年も自分が練習していく大切な相棒となる楽器です。
その楽器が、おもちゃのような音しか出ないのでは、練習に身が入るはずがありません。
電子ピアノですから様々な音が出るでしょうが、その中で必ず自分でも「ピアノ」として納得できる音が最低でも1種類は出せる電子ピアノを選んで下さい。

ピアノは88鍵のものを選ぶのが無難です。それより少ない数のピアノも販売されていますが、どうしても弾けない曲が出てきますし、本物ののピアノを弾く時に違和感を感じてしまいます。

椅子も、高低を調節できるピアノ椅子の購入をお勧めします。最適な高さを選べますし、一度買えば「ほぼ一生もの」なのでコスパも良いです。

鍵盤のタッチが、アコースティックピアノを再現した電子ピアノである事

電子ピアノの鍵盤には、大きく分けて2種類あります。
アコースティックピアノの感触のタッチを再現している電子ピアノと、一切その事を考慮していない電子ピアノです。
「電子ピアノが弾けるようになりたい」のなら後者でもOKですが、「本物のピアノが弾けるようになりたい」のであれば、迷わず「アコースティックピアノのタッチを再現している電子ピアノ」を選ぶ必要があります。
タッチの異なるピアノでは、日頃の練習の成果を発揮する事ができないからです。

私はヤマハのクラビノーバを選びました。
国際的に高い評価を得ているアコースティックピアノの製造元で知られるヤマハですから、彼らが作る電子ピアノ(クラビノーバ)も超一流です。
クラビノーバの音源は自社の最高級グランドピアノの音をサンプリングしたものですし、鍵盤のタッチもアコースティックピアノのタッチを非常に高いレベルで再現しています。
作りもしっかりしていて、耐久性もバッチリです。
ただ、新品だと殆どが20万円以上なので、手が届かない場合もあると思います。
その場合は、YAMAHA以外のメーカーの電子ピアノで実際に音を出してみて、納得できるものを探して下さい。
大型の電気店の多くには電子ピアノのコーナーがありますし、イオンモール等の大型ショッピングセンターにも、楽器全般から楽譜まで取揃えた販売店があるはずです。
更に、各メーカーの直営販売店を検索すれば、そのメーカーの主だった電子ピアノを実際に行って弾いてみる事ができる店を見つけられます。
私も、渋谷道玄坂のヤマハ渋谷店に行き、実際にクラビノーバを試した上で購入しました。

今調べてみると、ヤマハ渋谷店は2010年に閉店したとの事。
あんなに大きくて、長い歴史を誇った渋谷店が閉店してしまったとは知りませんでした。
ちょっとショックです。
(ヤマハ銀座店は健在のようですので安心しました。)

「ピアノ 中古販売」で検索すると、中古でピアノが買える店が多数見つかりますので、一度行ってみるもの良いでしょう。

メルカリやジモティー、ハードオフ等を探す手もあります。

ただ、これから購入するピアノの「音」と「鍵盤のタッチ」の2つは、実際に確認してから購入される事を、強くお勧めします。


電子ピアノは、ヘッドフォンを装着すれば、スピーカーから音が出なくなります。
が、ピアノを弾く時の鍵盤の振動は、床を突き抜けて、階下に伝わっていきます。
この鍵盤の振動音で、私は隣人に迷惑をかけてしまいました。

私は当時、軽量鉄骨の安アパートの2階に間借りしていました。
その部屋に電子ピアノを設置して練習を開始した訳ですが、鍵盤のノイズが階下に響いているとは全く知りませんでした。
ただただ、ピアノを弾けるのが嬉しくて、会社から戻ってから寝るまで、毎日何時間も練習していたのです。

そして1ヶ月ほども過ぎた頃、誰かが私の部屋のドアを強くノックしました。

その人は私の真下の部屋の住人で、1ヶ月もの間、天井から響いてくる「ドコドコドコドコ」という謎のノイズに苦しみ、我慢に我慢を重ねた挙げ句に、意を決して私に苦情を言いに来たのです。
そんなに我慢しないで、すぐに教えてくれれば良かったのですが、そんな事を言っても始まりません。
私は直ちに詫びるとともに、
「今後は一切、この部屋ではピアノを弾きません。どこかピアノを弾いても他人に迷惑をかけない所に引っ越します。」
と約束し、数日後には3階建てのマンションの1階の部屋を借りて、引っ越ししました。

スピーカーから出る音だけでなく、鍵盤の振動が階下に伝わって、そこに住人がいる場合には迷惑をかけてしまう可能性がある、という事への配慮は絶対に欠かせないという事をお忘れなく。

ピアノの基礎知識を学ぶ

今はYoutubeを利用できますので、ピアノの知識の全てを無料で学ぶ事ができます。

「ピアノ 基礎」

「楽譜 読み方」

等のキーワードで検索して、良さそうな動画を次々と見ていって下さい。

「この先生の説明は、ホント解りやすいな~」

と思えるチャンネルが見つかったら、すぐにチャンネル登録して、今度はその先生のチャンネルの動画を集中して見ていけば、ピアノの演奏に必要な知識を網羅的に学ぶ事ができます。

ただ、親切な解説動画は無限に存在しているので、全部を見て回るのは不可能です。
ある程度解ったと思えたら、実際にピアノを弾き始めて下さい。
お手本の動画やCDがあるので、いつでも楽譜を見ながら演奏を聴けますから、楽譜の意味や記号の名前等の記憶は適当でも大丈夫です。楽譜の知識習得に長く時間を使うよりは、演奏に時間を使うべきです。
そして、新たに疑問に感じる事が出てきたら、その時にまたYoutubeやGoogleを検索してみて下さい。大抵の疑問は、それで解決できます。

コードは、学ぶべきか?

コードの知識は、無いより有った方が良いのでしょうが、少なくともショパンやベートベン等のクラシックのジャンルで頑張るのなら、コードの知識は無くても問題ありません。
私は3年近くピアノを習っていましたが、コードに関しては一切教えてもらっていません。
必要が無いからです。
だから今もコードの知識はありません。

とりあえずコードは無視して、楽譜の読み方や指の動かし方に集中していって下さい。
そしてあなたの弾きたい音楽のジャンルによって、必要となってから、コードを学べば良いと思います。

弾きたい曲を決める

ピアノを始める場合、バイエルのような定番の教則本を買って、超簡単なレベルから段階的にレベルを上げていく方法と、いきなり弾きたい曲の楽譜を入手し、その曲を1小節ずつ、コツコツと攻略していく方法の2種類があります。

私が最初にピアノを習った時は、当たり前のように前者でした。
バイエルの赤色、バイエルの黄色、ソナチネ、ブルグミュラー、ツェルニーといった教則本の曲を弾かされ続けました。

「何か弾きたい曲はないの?」

なんて先生に聞いてもらった事は一度もありません。
生徒が弾きたい曲の事なんて一切考慮せず、ひたすら「王道」というレールの上を歩かせるって、今にして思えば人権無視じゃないかとさえ思えます。
でもこれば、ピアノ初級者への教育の王道であり、こんな試練すら乗越えられない凡人にプロが務まるはずが無いのだから、初級者のうちにピアノを諦めさせてあげよう、という親心なのかも知れません。
でも私は、プロになろうなんて考えていたのではありません。
ただ、ピアノで自分の好きな曲を弾けるようになりたかっただけです。

ですから、最初から自分の弾きたい曲を練習すれば良いのです。
これが一番練習に身が入るし、根気も続くのです。

とは言え、いきなりショパンの革命や木枯らしにぶつかっていっても玉砕します。
Youtubeで「これなら、自分でも弾けるだろう」と感じられる曲を見つけて下さい。

私の選んだ1曲目はフォーレのシシリエンヌでした。
特に深い理由があった訳ではなく、単にメロディーが好きだっただけです。

そして2曲目以降は難易度はあまり気にしないで、とにかく「弾けるようになりたい曲」を選んでいきました。

何度も繰り返し同じ部分を弾いていると、やがてその部分が頭に入り、楽譜を見なくても弾けるようになります。その繰り返しで少しずつ楽譜を覚えていき、更に繰り返し練習を続けていくと、やがて指が曲を覚えて、次にどの指をどう動かすか等を考えなくても、自動的に曲が弾けるようになります。ここで焦って速く弾こうとしないのが練習のコツです。お手本の演奏よりも遥かにゆっくりしたテンポで、全ての音を大切にして、繰返し練習します。そうする事でしっかりと指が楽譜を覚えていき、後々のテンポアップに耐える準備を調えるのです。

楽譜を見なくても完璧に弾ける(超スローですが)ようになったら、そこから徐々にテンポアップしていく練習に入ります。夢でみるほど弾きたかった曲が、本当に弾けるようになっていく、ピアノ練習の至福の時の始まりです。

そして更にCDやYoutube等のお手本と比べながら、自分の癖を矯正しつつ練習を続けていくと、とても時間はかかりますが、自分なりに「弾けるようになった」というレベルに到達する事ができます。

自分なりに納得できるレベルになったら、また次の課題曲を選び練習をしていきます。
この時、1日10分でも良いので、ハノンも平行して練習するのがお勧めです。
ボクサーがスパーリングをやるのと平行して、ランニングや縄跳びで足腰を鍛えるのと同じです。
無味乾燥なハノンですが、その効果は折り紙付き。
ピアノの教則本の売上ランキング第一位に定着しているのも、伊達ではありません。

弾きたい曲の練習の前にハノンをやると、最善の指のウォーミングアップになります。
先生の命令に従ってハノンをやらされるのは苦痛ですが、弾きたい曲を弾く為の基本訓練としてハノンをやり、指がどんどん動き安くなっていく効果を実感できれば、むしろハノンが好きになっていけるはずです。

ピアノの先生を見つけるのも素晴らしい妙案

ピアノの独学を開始して、1曲以上レパートリーができたら、ピアノの先生に評価してもらうのもお勧めです。
自分の演奏の録音と、お手本の演奏をしっかり比較して、日々欠点を修正し続けている人なら必要無い可能性もありますが、プロの先生から合格点をもらえたら、それはそれで素晴らしい事だし、何点かでも修正すべきポイントを指摘して貰えれば、その事に気づかせてもらった事がきっかけで、あなたのピアノの技量が大きく伸びる可能性もあります。

ピアノの独学者が10人いれば、合格点をもらえるのは1~2人程度で、その多くは想像もしていなかったような修正点を指摘され、目が覚める思いをすると思います。

私も、長女にピアノのレッスンを受けさせていた時に、その先生に数回レッスンしてもらった事があるのですが、いくつか楽譜を読み間違えていたのを的確に指摘してもらい、その後はより正確さに注意して楽譜を読むようになりました。毎日自分の演奏を聞き続けていると、音の間違いに気づけなくなってしまうようです。
いかにもレベルの低い話ではありますが、独学であっても、たまにプロに指導してもらう事は、得るものが多いという体験談です。

身近にピアノの先生がいなければ「ピアノ レッスン ○○市」等のキーワードで検索すれば、いくつかピアノを教えてくれる教室が見つかるので、近いところから順に電話で単発のレッスンが受けられないか問い合わせてみれば良いでしょう。ちょっと勇気がいるでしょうけど・・・?

まとめ

大人になってからピアノの練習を開始してプロのピアニストになるのは無理です。
でも、あなたの努力次第では、かなりの難曲でも弾けるようなる事は可能です。

しかも、毎週レッスンにかようような事をしなくても、録音機能を備えた電子ピアノで自分の演奏を客観的に評価しながら改善を続けていく事で、独学により超初心者から、ベートーベンのソナタやショパンのワルツやノクターンを弾きこなす中~上級者レベルになる事も不可能ではありません。

独学で高い効果を得る為には、

  • ・独学に適した電子ピアノを手に入れる
  • ・他人に迷惑をかけない環境でなければ、練習に集中できない
  • ・ピアノを弾く為の知識は、Youtubeで十分得られる
  • ・心から弾きこなしてみたい課題曲を決めて、コツコツと何ヶ月でも徹底的に練習する
  • ・課題曲の練習の合間にでもハノンの練習をすれば、ボクサーが縄跳びで鍛えるように、ピアノの足腰(基礎)がしっかりする
  • ・年に1回とか、数年に1回でも良いから、プロのピアノの先生に指導してもらえば、盲点に入って自分では気づけない改善点が判り、大幅にレベルアップできる可能性がある

等について解説してきました。

ピアノの練習を続けていると、聴くだけでも魅力的だった楽曲の、細部の魅力にまで更に深く気づくようになります。その楽曲が持つリズムやハーモニーのユニークな相互作用は、ピアノで演奏する事で初めて、あなたの中で花開いてくれるのです。
コツコツと繰り返す反復練習の結果、曲を奏でる各指の運動が自動化のレベルに達したとき、その曲とあなたのつながりは、筆舌に尽くしがたいほど心地よい感覚となるのです。

これを一度でも経験すれば、心が折れてしまいかねない単調な反復練習も苦にならなくなり、練習のたびに上達が実感できるようになります。
ピアノとその楽曲への理解が深まり、演奏技術が向上すればするほど、親しみやすく、心に響く音に魅了されることでしょう。
ピアノの独学は、単に楽器を弾けるようになるという単純な事だけでなく、音楽の奥深さを解き明かす事でもあるのです。

ぜひあなたも、独学で頑張ってみて下さい。